インプラント治療後に起こりうる注意すべき点とは?
投稿日:2025年8月17日
カテゴリ:スタッフブログ
インプラント治療は、失った歯の機能や見た目を回復するために非常に有効な方法です。しかし、治療が完了したからといって「もう大丈夫」と安心しきってしまうのは危険です。
インプラントは“人工の歯”ですが、天然歯と同じようにメンテナンスが必要であり、注意すべき点も多くあります。
本記事では、インプラント治療後に特に注意すべきポイントを10項目に分けて解説し、それぞれに対する対策や、放置した場合に起こるトラブルについてもお伝えします。
1. 毎日の正しい歯磨きを徹底する
インプラントは人工物ですがその周囲組織は違います。その周囲にプラークや磨き残しがたまると、インプラント周囲炎を引き起こすリスクが高まります。
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対策: 歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、専用ブラシやフロスを使って自身の歯はもちろんインプラント周囲を丁寧に清掃する。
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起こるトラブル: インプラント周囲炎は、いうなればインプラントの歯周病です。周囲の歯ぐきが腫れたり膿が出たりして、徐々に骨が溶けていきます。最悪の場合、インプラントが本体ごと脱落する(=抜けてしまう)可能性があります。
2. 定期的なメンテナンス・歯科検診をうける
インプラントは人工物なので知覚神経は当然ありません。それゆえにトラブルが水面下で緩やかに自覚症状がないまま進行しているケースは意外と多いです。トラブルが表在化したときには大事になることもあります。
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対策: 半年に1回以上、1年に2回以上は定期検診とメンテナンスをきちんと受けることを推奨します。大抵の場合、レントゲン撮影してインプラントの周囲の骨の状況を確認したり、適合状況、噛み合わせの状態などを検査します。
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もちろん、インプラント以外の歯に歯周病の兆候がないかもチェックします。そういった部位があるだけで口腔内で歯周病原菌を共有することになるので、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
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起こるトラブル: 問題の早期発見が遅れ、対処が後手に回ると治療が困難になったり、追加のコストが必要になることがあります。
3. 禁煙する
喫煙は口腔内の血流を悪化させます。インプラントの術後の経過が悪くなり、定着までの時間が長引いたり、定着率が著しく低下します。また、定着したあとでもインプラント周囲炎のリスクが跳ね上がりますので、仮にメンテナンスをしっかり受けていたとしても本体が脱落するリスクが常に付きまとうことになります。
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対策: 治療することになったらその時点から禁煙することが望ましいです。インプラントの埋入処置する日だけ禁煙、またはその前後の日だけ禁煙、というのは全然意味がありません。治療後も禁煙は継続するほうが良いです。
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起こるトラブル: インプラントの脱落リスクが非喫煙者の倍以上に上がるとされています。
4. 強い咬合力・食いしばり・歯ぎしりをコントロールする
歯ぎしり食いしばりが常習化していてインプラントに強い力が加わると、上部構造(人工の歯)が破損するだけでなく、インプラント本体を揺さぶる力がかかるので、インプラント本体が脱落することがあります。
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対策: 歯ぎしり食いしばりがある方は就寝時にナイトガード(マウスピース)の使用が推奨されます。また、ボツリヌストキシン注射による咬合力のコントロールも選択肢に入ります。
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起こるトラブル: 上部構造の破損だけでなく本体と上部構造を締結しているネジが緩んだり、ひどい場合インプラント本体の破損や脱落などがありえます。
5. 周囲の天然歯の歯周病を放置してしまう
口の中に天然歯(自身の歯)が残っていて、その歯が歯周病に罹患している場合、唾液などを介して同一口腔内のインプラントにも感染してしまいます。
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対策: インプラント治療を行う前にご自身の歯も含め歯周病治療を徹底的に実施し、セルフケアを習慣づけておくと良いでしょう。また、インプラント以外の全体の口腔ケアを徹底しましょう。
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起こるトラブル: 天然歯由来の歯周病がインプラント周囲炎を引き起こすリスクになり、インプラント本体の動揺や脱落が起こり得ます。
6. 糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患がある
糖尿病は易感染性の原因になり、インプラントと骨の結合中に雑菌感染を引き起こしやすいです。また骨粗鬆症といった骨代謝異常は、インプラントと骨の結合する期間が長引きます。
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対策: よほど重度でない限り、糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患があったとしてもインプラント治療は可能です。しかし、それでもやはり全身疾患の治療主治医との連携が必要になりますので、必要に応じてインプラント治療を行う上で留意すべき点などの聴取が必要になります。また、全身疾患の影響でインプラントの寿命が短くなるので、メンテナンスの周期を通常より短く設定することがあります。
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起こるトラブル: インプラントの埋入後、インプラント本体が骨にうまく定着しなかったり、長期安定性が得られず、寿命が短くなります。
7. 口腔内の乾燥や唾液の減少
唾液の減少や、それによる口腔内の乾燥は細菌の繁殖を促してしまいます。それによりインプラント周囲炎のリスクが高まります。
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対策: 水分をこまめに摂り口腔内の湿潤状態を保つようにしたり、唾液腺マッサージが有効です。また、口ポカンや口呼吸は口腔乾燥の原因になるので鼻呼吸をするための呼吸環境の改善治療などが良いでしょう。
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起こるトラブル: 細菌の活動が活発になり、口腔内の炎症全般(歯肉炎、歯周病、インプラント周囲炎など)が起きやすくなります。
8. インプラント周囲の歯ぐきに異常があっても放置してしまう
インプラント周囲の違和感や出血・腫れや変なニオイなどの小さなサインを放置すると、今後取り返しがつかない大きなトラブルに発展してしまう可能性があります。
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対策: 些細な違和感・トラブルでも放置せず、すぐに歯科医院を受診し、相談のうえで適切な治療を受けるようにしましょう。
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起こるトラブル: 重篤なインプラント周囲炎やインプラント本体ごと脱落する可能性があります。
9. 「インプラントは虫歯にならないから安心」という誤解
インプラントは確かに虫歯にはなりません。しかし歯周病にはかかります。
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対策: 自身の歯と同様かそれ以上、インプラント周囲の清掃を徹底し、メンテナンスを怠らないことが重要です。
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起こるトラブル: 虫歯にならないから、とセルフケアを怠ることでインプラントの寿命が短くなることがあります。
まとめ|インプラントは「入れて終わり」ではない
インプラント治療は、昨今の技術と材料の進歩により高い成功率と安全性はもはや当たり前となり、なおかつ長期的な咬合機能の回復が期待できる一方で、術後の自己管理と歯科医院との連携が非常に重要な治療になります。
今回頻繁にあげさせてもらった「インプラント周囲炎」ですが、一旦発生すると非常に厄介です。というのも、一度発症すると完治が難しく、常に再発リスクと隣り合わせになるからです。そうならないためにも、“予防”の意識を持つことが、インプラントを長持ちさせる鍵です。
今回お話した注意点を意識しながら、インプラントと共に健康な口腔環境を保っていきましょう。
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