ワイヤー矯正にかかる期間はどれくらい?
投稿日:2025年5月6日
カテゴリ:歯と全身の健康
歯並びや噛み合わせの矯正、と聞いて最初にイメージするのは歯に装置をつけてそれにワイヤーを固定する「ワイヤー矯正」ではないでしょうか。
近年では「マウスピース矯正」も普及していますが、ワイヤー矯正はその精密性と幅広い対応力から、今なお多くの患者さんに選ばれています。この記事では、ワイヤー矯正にかかる治療期間について、治療の種類ごとに詳しく解説していきます。

ワイヤー矯正の特徴
先述した通りワイヤー矯正とは、歯の表面にブラケットという装置を装着し、そこに金属製のワイヤーを通して、歯に持続的な力を加えていく治療法です。特徴としては以下のような点が挙げられます:
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・高いコントロール性:ワイヤーに一つ一つの歯に対応した細かな力を加えるための調整が可能なため、精密な誘導ができます。
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・適応範囲が広い:叢生(歯のガタガタ)、出っ歯、受け口、過蓋咬合など多くの症例に対応可能です。
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・治療経過の可視化:段階的な変化が自覚しやすいので、効果を実感しやすくモチベーション維持につながります。
上記のような特徴のほかに、見た目はマウスピース矯正より劣るうえ、専門性が高く術者の技量に左右されやすい上、歯にかかる力が強く不快感が大きいといったデメリットも当然あります。
ワイヤー矯正で歯列矯正を行った場合の期間
軽度から中等度の歯列不正に対して、噛み合わせや顎の位置に対しての大きな誘導や調整を伴わず、歯並びの見た目の改善を目的としたワイヤー矯正治療では、治療期間は以下のようになります:
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・治療期間の目安:およそ1年〜2年
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・通院頻度:月に1回程度の調整
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・適応症例:前歯の叢生(デコボコ)や中等度の出っ歯、すきっ歯などが対象
歯列矯正治療終了後に保定期間としてワイヤー矯正を行った期間と同等、あるいは2倍相当の期間にわたりリテーナー(保定装置)を使用することが推奨されます。
顎位誘導を含めた全顎的な矯正を行う場合の期間
ここで言う全顎的な矯正とは、歯列の見た目だけでなく、上下顎の位置関係や咬合(かみ合わせ)にも治療の手を伸ばし、上下顎の位置関係を見直すことで顎の関係を理想に近付ける治療です。
この場合、使用されるワイヤーは通常のものとは異なり、GEAWワイヤーという特殊なワイヤーを使用することになるうえ、上下顎の間に輪ゴムを掛けて持続的な力がかかるようにしたり、インプラントアンカーと呼ばれる極小のインプラントを歯茎越しに埋入し、それを用いた機構によって矯正を進めることもあります。GEAWワイヤーの特徴は以下の通りです:
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・治療期間の目安:2年〜5年(症状の程度や噛み合わせの状態などによってはそれ以上)
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・通院頻度:月に1回程度の調整
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・適応症例:骨格的に問題のない顎の位置異常
どの矯正でも言えることではありますが、矯正治療開始前に検査とそれに基づいた治療計画を立てる必要があります。とくにGEAWワイヤーを用いた矯正治療の場合、様々な資料採得とそれらによる多角的な精密検査と診断を行っていきます。また、段階的に評価を行い、矯正計画を見直したりします。また、噛み合わせを治療することを主な目的としているため、既存のワイヤー矯正よりも更に専門性が高く、扱える歯科医師が限られることが多いです。
全顎的な矯正は、見た目の改善はもちろん、それに加えて頭頸部全体のバランス改善、機能的な噛み合わせの改善・回復を目指すことができます。それをかなえるためには長期的かつ綿密な治療と、患者ひとりひとりのモチベーションの維持と継続的な通院ができる期間と環境が求められます。
まとめ
ワイヤー矯正にかかる期間は、目的や治療の範囲によって大きく異なります。見た目の歯列を整えるだけなら1〜2年程度ですが、顎の位置や咬合を含めた全顎的なワイヤー矯正では2〜5年と、やや長期になることが一般的です。
重要なのは、矯正治療を行う上で何を得たいのか、ということです。見た目だけどうにかしたいのか、噛み合わせを良くしたいのか、時間と手間がかかっても見た目も噛み合わせも良くしたいのか…、患者ひとりひとりの希望に沿って治療を進めていくためにも、その点は明確にする必要があることと思います。
いずれにおいても、しっかりとコンサルティングを受け、信頼できる矯正専門医に相談することをおすすめします。
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